関 良基著「赤松小三郎ともう一つの明治維新」テロの葬られた立憲主義の夢
(作品社出版)
恐らく多くの人がこの人物の名前を知らないでしょう。私もこの本に出合うまで知りませんでした。「福沢諭吉帝国主義イデオロギー」を読んで福沢諭吉も観る角度で、全然違う風景が見えてくる。そしてまた、この書を読むと、江戸政権末期に小松小三郎という、今の憲法を先取りする考えを「御改正口上書」として、薩摩藩・越前藩に立憲主義・基本的人権・議会などを記した建白書を提出した傑出した人物がいたということに驚きである。時代的に坂本龍馬などにも影響を与えた人物である。如何に、歴史が時の政権に都合(プロパガンダ)によって、書き換えたり、解釈を変えたり、事件として残る暗殺以外に、都合が悪い人物は歴史上から抹殺されているかを知る。
小松小三郎、信州上田藩の下級武士であり、英国式の兵法を教える兵学者である(門下生に東郷平八郎などがいる)が、彼が著した「御改正口上書」にある内容は、今の憲法の理念と比べて何ら遜色のない内容を持っていたということである。
安倍晋三総理をはじめ、明治150年を迎える来年、明治を賛美する式典を考えているようだが、はたして、それに値する価値のあった明治政治だったかどうか、よく考える必要がある。例えば、安倍総理も引き合いに出す、吉田松陰のついても、彼が排外主義者で、尊王攘夷論者であり、テロリストの側面を持っていたことも忘れてはならない。松下村塾の門下生たち、高杉晋作・品川弥次郎・伊藤博文等々、自分の思いを遂げるために暗殺、即ちテロ行為を実行していた事実も見過ごされやすい。
今の日本が置かれている政治状況を否と思うとき、その解を惹起させてくれる名著かと思います。著者も安倍政治に危機をもってこの本を書いたと言っています。
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