2017年3月31日金曜日

お釈迦様の教え 道徳教育 人のこころ 徳目 教育勅語 

中村 元著「ブッダ伝 生涯と思想」角川文庫

  インド哲学・古仏教研究の泰斗、中村元先生がNHKの「こころの時代」で講義された内容を文庫本にした本です。

  古い仏典を解説して、ブッダの教えが何であるかを教えてくれています。「難しいことを易しく、解りやすく」の書だと思います。あたかも僧侶は難しい経典を難しいまま唱えることにご利益?があるがごとき在家に接する。しかし、お釈迦さまの教えは決して難しくない?中村先生の解説が解りやすいということもあります。人がどう生きていくかについて、真理に基づいて説いている。ただそれだけのことなんだと思います。

  こころの在り方、徳目、いじめ問題などなどに対し、古典仏教、即ちブッダの教えにはその「こころ」が書いてあります。2500年も前にすでに、人間の営みの在り方を、悟りを開いたという形で広く人々の心を掴んできました。

仏教は、「四苦八苦」この苦は苦しみではなく、意のままにならないということだそうです。仏教徒以外のひとからは、仏教は「厭世的で、悪しきニイリズム」だと捉える向きもあるようですが、しかし、ブッダは最期の旅で「世界は美しいもので、人間の生命(いのち)は、甘美なものだ」と仰せです。

2017年3月22日水曜日

日本語 花 東アジア 漢字文化圏 日本の四季と男女の仲

石川九楊著「〈花〉の構造ー日本文化の基層ー」

本題の様に、「花」と言う言葉をテーマにした、文化論です。
著者曰く、「日本語と言うのは単一の言語ではない。漢字語の漢文、漢文体、漢文法、ひらがな語のひらがな文、ひらがな文体、ひらがな文法、国文法このふたつが混合した宇宙が日本語である」と。さらに、今の日本は劣化していると言及しています。

また、「日本語や日本語文法というものはないということである。英語があり、フランス語があり、ドイツ語があり、アラビア語があるというように、日本語があると考えるのは、言葉がもっぱら声で成り立っているという西欧言語学モデルの誤れる発想である。文字が言葉に深く関与する東アジアにおいては、漢字語=漢語が東アジア漢字文明圏(中国、日本、韓国、朝鮮、越南)にまたがる共通言語である。」・・・・

「花」を通して、ユニークと言っては著者に失礼かもしれません、私の様な凡夫には難解な点もありますが、大変興味のもてる本です。

2017年3月18日土曜日

安倍政権 吉田松陰 テロ 共謀罪 江戸政権 明治長州政権から150年

 森田健司著 「明治時代という幻想 暴虐の限りを尽くした新政府の実像」洋泉社

 今年は大政奉還150年で、来年は明治以来150年の節目になります。安倍政権はなんか祝賀を企画しているようですが、異を唱えたい。
  安倍晋三総理は、吉田松陰を尊敬していて、松陰の辞世の句;
     「身はたとひ 武蔵に野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂」
安倍総理は、「ここに込められた気概には圧倒される」と言っています。そこで、この句を、誰もが忌まわしい存在と思っている「イスラム国」の人たちに置き換えてみると、
     「身はたとひ アラブの砂漠に 朽ちぬとも 留め置かしまし イスラム魂」
このように読み替えても違和感がありません。なぜなら、両者に共通するのはテロリストだからです。自分の意に沿わない敵は武力をもって倒す。これがテロです。
  しかし、多くの日本人が吉田松陰を尊敬していると言います。例えば、同じ長州出身の日本共産党の宮本顕治氏もその一人だそうです。更に、日本共産党を代表する野坂参加三・志賀義雄も長州出身である。今もって、「長州右派」対「長州左派」の対決構図が続いている?
  吉田松陰は、老中間部詮勝の暗殺を松下村塾の弟子たち(高杉晋作・伊藤博文・品川弥次郎ら)と画策したことで、時の法度に反した罪で刑死した人物です。勿論、啓蒙思想家ともいえる学者であり、その言語が人々の心に影響を与えたことも事実でしょう。しかし、彼の門下生たちが、その後、高杉晋作らは建設中の英国公使館焼き討ち、伊藤博文らは橘次郎暗殺等々、明治に至るまでの歴史に残る著名人の多くはテロに関わっている。そして、彼らは攘夷が正義とばかりに下関戦争で大敗を喫す。この事件が江戸政権には条約交渉の重しとなっていく。後に不平等条約と言われるのは、こうした、偏向した攘夷思想の長州藩や薩摩藩の中途半端な軽挙妄動連中の「付け」であり、決して江戸政権の交渉力のなさからだけではなく、寧ろ、交渉に当た江戸政権の役人たちは結構頑張った。

  今、安倍政権は「テロ等準備罪」即ち「共謀罪」法案を成立させようとしています。これがないと、東京五輪も開けないと、まことしやかに喧伝しています。孝明天皇を拉致しようと禁門の変で当時の首都京都市内を騒乱状態にした久坂玄瑞もいました。安倍総理はテロを起こし、暗殺を繰り返した人物を尊敬しながら、「共謀罪」を実しやかに成立させようとする。テロリストを尊敬すると言う人に「共謀罪」はできないでしょう。

  この民主主義の憲法を持つ今の時代に、先の敗戦の総括もなしに、明治維新を祝う必要性はない。日本の長い歴史のなかでは、寧ろ異質な明治からの半分の75年を検証し、総括するほうが遥かにこの国の将来のためになる。


2017年3月14日火曜日

赤松小三郎 立憲主義 江戸政権末期 憲法 戦後レジーム 明治長州政権(長州レジーム)

関 良基著「赤松小三郎ともう一つの明治維新」テロの葬られた立憲主義の夢

作品社出版)

恐らく多くの人がこの人物の名前を知らないでしょう。私もこの本に出合うまで知りませんでした。「福沢諭吉帝国主義イデオロギー」を読んで福沢諭吉も観る角度で、全然違う風景が見えてくる。そしてまた、この書を読むと、江戸政権末期に小松小三郎という、今の憲法を先取りする考えを「御改正口上書」として、薩摩藩・越前藩に立憲主義・基本的人権・議会などを記した建白書を提出した傑出した人物がいたということに驚きである。時代的に坂本龍馬などにも影響を与えた人物である。如何に、歴史が時の政権に都合(プロパガンダ)によって、書き換えたり、解釈を変えたり、事件として残る暗殺以外に、都合が悪い人物は歴史上から抹殺されているかを知る。

小松小三郎、信州上田藩の下級武士であり、英国式の兵法を教える兵学者である(門下生に東郷平八郎などがいる)が、彼が著した「御改正口上書」にある内容は、今の憲法の理念と比べて何ら遜色のない内容を持っていたということである。

安倍晋三総理をはじめ、明治150年を迎える来年、明治を賛美する式典を考えているようだが、はたして、それに値する価値のあった明治政治だったかどうか、よく考える必要がある。例えば、安倍総理も引き合いに出す、吉田松陰のついても、彼が排外主義者で、尊王攘夷論者であり、テロリストの側面を持っていたことも忘れてはならない。松下村塾の門下生たち、高杉晋作・品川弥次郎・伊藤博文等々、自分の思いを遂げるために暗殺、即ちテロ行為を実行していた事実も見過ごされやすい。

今の日本が置かれている政治状況を否と思うとき、その解を惹起させてくれる名著かと思います。著者も安倍政治に危機をもってこの本を書いたと言っています。

2017年3月9日木曜日

安倍政治 日本会議 福沢諭吉 帝国主義

「福沢諭吉と帝国主義イデオロギー」杉田 聡著 花伝社

日本会議の政策
(1)天皇崇拝・天皇制改編・男系の維持
(2)新憲法制定
(3)国防・軍事の強化(自衛隊の国防軍化)
(4)愛国心教育の推進
(5)人権制限
(6)家族制の強化
(7)「自虐的歴史観」の克服
(8)天皇・首相らの靖国参拝・公式参拝の実現
(9)領土防衛

福沢諭吉の帝国主義的イデオロギーと明治政府
(1)「帝室」の重視=絶対主義的天皇制の擁護
(2)明治憲法の絶賛ー人権制限・反立憲主義
(3)「軍国」化=軍備拡張とそのための徴税・増税
(4)「報国心」の形成、「報国の大義」の普及をめざす教育の実現
(5)官民調和のための各種人権の制限
(6)人種改良のための女性の役割、家庭に対する女性の責務
(7)明治の歴史修正主義
(8)国民(軍人)統制のための靖国神社の利用

これは著者が、現在進行中の安倍政権と一心同体と言っていい「日本会議」の政策と、明治政府とこれまた殆ど表裏一体の福沢諭吉の考え方の比較だそうです。尚、(9)の領土問題は、日本会議の重要な運動目標だが、現代と福沢の時代では政治状況が違いすぎるので、省くとあります。

日本会議がこの福沢諭吉の考え方を、この現代に持ち込んでいることが、この本を読むと分かると思います。福沢諭吉の時代、即ち彼が求めていた「脱亜入欧」(「分亜入欧」と言う言い方あるとか)の時代は、その手本となる西欧諸国が帝国主義・植民地主義の全盛の時代でした。こうした流れを結局1945年まで続けてしまった。あれから70年、またぞろ福沢諭吉の考えが今のこの時代に蘇ろうとしている。詳しくは、ご一読あれ。