2020年11月26日木曜日

戦後保守


       福永文夫著「大平正芳」(「戦後保守」とは何か 中公新書

一 保守主義は過去との連続を保ち伝統と秩序を尊重し、その中でできるだけ徐々に不安と混乱を少なくして創造と進歩をめざす立場である。

二 秩序をともなった自由と政治的平等を尊重する保守主義は、当然議会主義、民主主義を擁護し、常識と体験の上に立った中庸の道を歩む。

三 古いといわれる保守主義であるが、あくまで筋を通して、行政と立法の限界を十分考えながら合理主義に徹する。

60年代安保闘争など岸信介内閣の「政治の時代」から、寛容と忍耐で「所得倍増」計画で「経済の時代」の池田隼人を総理にする会から旗揚げした「宏池会」で池田を支えた、大平正芳・宮澤喜一・前尾茂三郎が共通していた、保守政治の基本的な考えをこの人たちはきっちり共有していたそうです。そして、大平氏は「文化の時代」を標榜していた。

その後、「三角大福中」(全員が総理総裁を経験)と言われる、自民党内での派閥抗争の激しかったことは、決していい面ばかりではありませんが、政治(政局)にダイナミズムがあったように思います。主流ができれば反主流が存在し、切磋琢磨していた面もある。

大平氏の座右の銘は「一利を興すより、一害を除くに如かず」だそうです。気負わずに、淡々と、結果よりもプロセスを重視し、現実的に問題を処理することを旨とした。そうした考えが、のちの「60点主義」の哲学ともよばれた、大平氏の政治姿勢のようです。

2020年7月18日土曜日

代表制民主主義を考える

           高安健将 著「議院内閣制」中公新書

戦後の憲法の元、日本が手本とした、英国の議院内閣制の歴史と現状を詳しく記した書です。そんな理想的とされた英国でも、近年スキャンダルや政策の失敗により、保守党と労働党は共に国民の信頼を失い、支持基盤の空洞化が進む。
危機に直面した英国は議員内閣制を変貌させる道を選んだ。挑戦する英国から日本は何を学ぶのか。著者は問うています。

20202年7月14日、新型コロナウイルス禍を「100年に一度の国難」と宣言した安倍晋三政府与党は、国会を延長せずにあっさりと国会を閉じた後、初めての休会中審査として、予算委員会を僅か三時間弱づづではあるが開いた。
数ある委員会の中でも、予算委員会は基本的に国政全般を議論できる場です。
にも拘らず、この日、閣僚席には西村担当大臣ただ一人と他の閣僚席には参考人が三人、また普段は参考人がいる席には副大臣(政府代表?)としているという、これまであまり見たことない光景でした。一瞬、目を疑いました。

小選挙区制度は二大政党政治を進めるための改革でした。それから20年余、それすら確立
できていない日本です。小選挙区制は大政党に圧倒的に有利です。野党がばらばらでいる限り、自民党の独壇場は続きます。せめて、与野党伯仲の状況を造らなくては、独裁国家になりかねません。

議院内閣制の日本も、現状を変えていかないと、代表制民主主義の危機⇒崩壊を招きかねません。政治家をもっと勉強し、有権者も「なんとなく」で決して選ばない土壌を作らなければならないと思います。

2020年6月3日水曜日

「永久平和のために」カント 集英社 を読み直す

この本の帯に⇒この本から「国連」や「憲法第9条」の理念が生まれた。とあります。

赤川次郎氏は、「真実のことばは時代を超えて人の心を打つ、カントは、戦争を「積極的平和」などと言い換えることを決して許さないだろう。とコメントを寄せています。

一文を紹介しますと「行動派を自称する政治家は、過ちを犯して国民を絶望の淵に追いやっても、責任は転嫁する」

世の中を分断することを厭わない政治家、自分の失政を認めない政治家、要注意ですね。

今こそ読みたい16歳からの平和論と、初心者向けですので、私のような者でも、理解出来た気がします。

2020年5月13日水曜日


            井波 律子 「論語入門」岩波新書

『過則勿憚改』 (過ちを改むるに憚るころなかれ)

どなたも知っている、有名な孔子の言葉です。
この言葉の前に、何が書かれているか?

『君子不重則不威。學則不固。主忠信。無友不如己者。過則勿憚改。』

君子(ひとかどの者・権力の座にある者)は、重々しくなければ威厳がない。学問をすれば、頑固でなくなる。真心と誠実さを主とし、自分より劣る者を友人にするな。過ちをおかしたならば、ためらわずに改めよ。
孔子は、45歳も年下の弟子の言葉の対し、自分が誤った返事をしたことに気づき、「前言戯言之耳」と謝ったそうです。

人間は誤りを犯すものです。「責任はある」と言いながら、全然取らない。「こちらから言わせれば、国民の皆さんが誤解している」と言って、反省の弁なし。こんな人たちが国のトップでいる国はどうなんでしょうか?

自粛の最中、論語の入門書を読み直してみています。

2020年5月10日日曜日

    後藤新平「国難来」鈴木一策=編・解説 (藤原書店)を読む。

関東大震災の後、東北帝国大学生を前に、第一次世界大戦のあとの、ベルサイユ条約の内容をみて、「第二次世界大戦を直観した」と講演したものを現代語訳で収録し、編者の解説付き書です。大震災後、後藤新平は、内務大臣・復興院総裁になり、その帝都復興計画の原案作りを東大教授本多静六(後に、「公園の父」と称される)に命じます。彼は二晩徹夜して計画書案を作りますが、大蔵省、帝国議会に反対され、縮減を余儀なくされます。実行された、隅田・浜町・金糸町の公園は、その後のアメリカ軍の空襲に際し、避難場所として大いに役立ったとのこと。

後藤は、本多に「実は、この場合誰がやっても同じさ、完全なものはできやしない。いい加減でいいんだ、いい加減で・・・・ただし、思い切ってでかいことをやらなければいけない」と言ったそうです。俺が責任持つからということだと思います。

本多静六は、これに先立つこと、東京駅などで著名な辰野金吾から丸投げされて、日比谷公園の設計をします。日本初の洋風公園ですが、東京市会には「夜間木や花が盗まれる」と反対されますが、「盗まれないくらいに国民の公徳が進まねば、日本は亡国だ。公園は一面その公徳心を養う教育機関の一つになるのだ」
彼は、投資家でもあり、莫大な資産を形成しますが、定年退官後(昭和27年)にほぼ全財産を匿名で寄付します。

後藤新平は、臨終間際「金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。」と述べたようです。

危機と復興への想像力、人に大事を任せ、人を動かす信念と言葉、そして泰然自若として目標に向かう努力、こうした人物を今の政界・財界に探すのは至難の業?




2020年5月6日水曜日

        【辛抱】と【我慢」の違いを考える

【辛抱】:環境の苦しさに押し流されないで、向上心をもち続けること。

我慢】:➀我(が)を立てる気持ちが強すぎ、自ら高しとする念が常に全面に出る意⇒⇒⇒⇒⇒自慢. 
     ➁少しくらい自説に無理があると分かっていても、意地で主張を通す様子。
     ③精神的・肉体的に苦しい事があっても意地で凌ぎ通し、弱音などは吐かない

新明解国語辞典には、以上のような解釈がなされています。

「我慢」は仏教の言葉です。ナーガールジュナ(龍樹)に始まる、大乗仏教の大事な教えの中に唯識論があります。興福寺・薬師寺などの法相宗が大切な教えとしています。
「世界は心の表象である」とし、六識(眼識・耳識・鼻識・舌識・身識+意識)この意識の奥に「未那識」があり、これが執着の源泉であり、更に倉庫の様に「阿頼耶識」がある。これらが蓄積され残滓⇒「薫習」タネとなりにおいがうつると言うことのようです。自我が執着し、未那識の歪んだ認識(我癡・我見・我慢・我受)これらの識を「智」へということのようです。
この中に出てくる「我慢」は;いつでも自分があると思い続けること⇒執着

この様に、我慢と辛抱はかなり違うと思いませんか。辛抱には向上心がありますが、我慢には、前向きな意味は無い様に想います。

今、世界は新型コロナウイルス禍の最中にあります。どのマスコミでも、我慢を使って、自粛(これは辛抱を求めている?)を言っています。

漢字(表意文字)は見てすぐその意味が分かる利点があります、我慢・自慢・怠慢・緩慢などなど、余りいい意味の熟語がないようです。

言葉は時代とともに、変化していきます。それが正反対の意味になっているケースも誤用されているケースも多々あります。

「家にいて辛抱しよう!」これが、今の新型コロナウイルス禍に対処する言葉ではありませんかね。

2020年4月15日水曜日

赤石読書会

地元に読書会が立ち上がる

文字離れ(書籍・新聞など)が顕著になり、SNSの普及により、簡単な文章でのやり取りで、世の中が動いている昨今、有志15人が集まり、読書会が発足しました。名付けて「赤石読書会」です。ここは、群馬県伊勢崎市ですが、嘗てここには赤石氏と言う藩主がいましたそうです。(私は市外からの者なので詳しく知りません)そこで、おこがましく、市全体の名を冠するより、地元中の地元にできた読書会なので、「赤石読書会」と名付けました。
昨年の一月から活動を開始して、一年三か月が過ぎました。この間、会員の皆さん全ての方に、一冊の本を選んでもらって、その内容や感想を約一時間話してもらい、それを参加会員がいろいろと意見・感想を述べていきます。当該の本は、事前に読んでもよし、読まなくてもよしです。中には、読まないで来てほしいとの発表者もいます。

発表される本のジャンルは様々です、自作の小説、本の裏側、注目の人物の小説、宗教に関する書、などなど千差万別です。年齢層がやや高いかもしれませんが、若い人もいますので、バラエティ豊かになっています。

この4月が、新型コロナウイルス禍で、通常の例会ができません。たまたま、発表者が一巡したこともあって、4月は「昼食会」の中で、今後の方針などを話あってもらうつもりでしたが、「三密」避ける意味合いもあり、お弁当は持ち帰りランチなりました。

中止することは、簡単ですが、「自粛」が「委縮」になってはいけないとのおもいから、非常事態宣言の適応されている都府県でも、十分通用する「自粛」の範囲内での「特別例会」となります。

新型コロナウイルス禍の収束を願いつつ、読書会の良さを追求していきたいと考えています。
因みに、私が当会の会長に選ばれ他次第です。任期は2年です。