2021年5月31日月曜日

「保守」とはなにか?

楕円の哲学】ー永遠の今ーeternal now-

  「過去を捨象 すると革命になり、未来を捨象すると反動になる。」というのが田辺哲学(田辺元)の教えているところであると思う。現在は、未来と過去の緊張したバランスの中にあって、革命であっても困るし、反動であってもいけない。未来と過去が緊張したバランスの中にあるように努めていくのが、「健全な保守」というものではないだろうか。私は保守主義をこのように考えている。-大平正芳「在素知餐」-

    註:「捨象」物事を論じる際に、本質的でないととらえられている部分を         無視こと。

   前尾繁三郎・大平正芳・宮澤喜一(宏池会)の保守政治の特性を共有

第一:保守主義は過去との連続を保ち伝統と秩序を尊重し、そのなかで出来るだけ徐々に不安と混乱をなくして創造と進歩を目指す立場である。

第二:秩序をともなった自由と政治的平等を尊重する保守主義は、当然議会主義、民主主義を擁護し、常識と体験の上に立った中庸の道を歩む。

第三:古いというイメージを持たれる保守主義であるが、あくまで筋を通して、行政と立法に限界を十分考えながら合理主義に徹する。


  人間の歴史には、いつの時代をとってみても、今日と較べて、ひどくよかったという時代はなかったようです。(中略)いかなる手段にも必ずプラスとマイナスが伴うもので、絶対的にプラスである手段などというものはないということです。現実にはよりプラスの多い、よりマイナスの少ない手段を工夫することだと思います。ー大平正芳「変革と対応」ー



2021年5月27日木曜日

「普通」とは


           温 又柔 著「真ん中の子どもたち」集英社

台湾で生まれ、3歳から日本で育った小説家。同署は2017年度の芥川賞候補作品です。
日本人父と台湾人母の19歳の女性と, ほかに男女二人が中心に、中国語(普通語。北京語)を勉強するために、上海の語学学校での出来事、恋愛、中台関係、日中関係等を絡めた、青春物語。

芥川賞候補に終わりましたが、選考委員の宮本輝は「・・・当事者にとってはアイデンティティと向き合うテーマかも知れないが、日本人には対岸の火事・・・他人事で退屈」と評していました。

著者は、子供のころ、自分の母の日本語がほかのひとと違うことを疑問に思う。彼女にとって日本の学校は、日本人ということが「普通」だど教え込まれる場所だった。それでも、「大勢の人が信じるものが正しいとは限らない。物差しはいっぱいある。少数者とか、はじかれている人はそのことに気づきがちです」とも言っています。

それでも、こうした環境で語学留学が借金しないで海外に行ける人たちはまだしも、日本に働きに来るのに多額の借金をして、技能実習生などように、一応技量とつけて国に帰ってもらうと建前で、実際は単に労働力としか見なされない人たちもいます。

移民問題・国際化・多様性、日本はまだまだやらねばならにことがたくさんあると思います。

2021年1月25日月曜日

半藤利一氏に捧ぐ


  両書籍は、先ごろ亡くなられた半藤利一氏に関する書です。上は「世界史の中の昭和史」(集英社刊)下は、学術会議メンバーの任命を菅総理に拒否されたままになっている、加藤陽子氏との対談が収録された「昭和史裁判」(2011年7月初版)です。

  上は、巻末に青木理氏との対談が掲載されています。ヒットラー・スターリンなどの独裁者に焦点を当てながら、日本の外交を軍部や政府がどのように対応・外交政策を進めていったかが年代を追って書かれています。
  一方、下は、文字通り、両氏、半藤氏が検察役で、加藤氏が弁護士役という設定で、軍人ではなく広田弘毅・近衛文麿・松岡洋祐・木戸幸一、そして昭和天皇に焦点を当てながら、「ただ、被告は人間というより昭和史そのものです。裁判というより歴史法廷です」(加藤氏の言葉)

  半藤氏はご自身を「歴史探偵」と称し、お二方とも、歴史の一次資料に没頭されての執筆がベースとのこと。この「世界史の中の昭和史」昨年2020年7月初版して、これまでに「昭和史」「昭和史戦後編」「B面昭和史」と執筆の後の謂わば集大成のような本であるような気がします。実質的に半藤氏の遺稿かも知れません。
 

2020年11月26日木曜日

戦後保守


       福永文夫著「大平正芳」(「戦後保守」とは何か 中公新書

一 保守主義は過去との連続を保ち伝統と秩序を尊重し、その中でできるだけ徐々に不安と混乱を少なくして創造と進歩をめざす立場である。

二 秩序をともなった自由と政治的平等を尊重する保守主義は、当然議会主義、民主主義を擁護し、常識と体験の上に立った中庸の道を歩む。

三 古いといわれる保守主義であるが、あくまで筋を通して、行政と立法の限界を十分考えながら合理主義に徹する。

60年代安保闘争など岸信介内閣の「政治の時代」から、寛容と忍耐で「所得倍増」計画で「経済の時代」の池田隼人を総理にする会から旗揚げした「宏池会」で池田を支えた、大平正芳・宮澤喜一・前尾茂三郎が共通していた、保守政治の基本的な考えをこの人たちはきっちり共有していたそうです。そして、大平氏は「文化の時代」を標榜していた。

その後、「三角大福中」(全員が総理総裁を経験)と言われる、自民党内での派閥抗争の激しかったことは、決していい面ばかりではありませんが、政治(政局)にダイナミズムがあったように思います。主流ができれば反主流が存在し、切磋琢磨していた面もある。

大平氏の座右の銘は「一利を興すより、一害を除くに如かず」だそうです。気負わずに、淡々と、結果よりもプロセスを重視し、現実的に問題を処理することを旨とした。そうした考えが、のちの「60点主義」の哲学ともよばれた、大平氏の政治姿勢のようです。

2020年7月18日土曜日

代表制民主主義を考える

           高安健将 著「議院内閣制」中公新書

戦後の憲法の元、日本が手本とした、英国の議院内閣制の歴史と現状を詳しく記した書です。そんな理想的とされた英国でも、近年スキャンダルや政策の失敗により、保守党と労働党は共に国民の信頼を失い、支持基盤の空洞化が進む。
危機に直面した英国は議員内閣制を変貌させる道を選んだ。挑戦する英国から日本は何を学ぶのか。著者は問うています。

20202年7月14日、新型コロナウイルス禍を「100年に一度の国難」と宣言した安倍晋三政府与党は、国会を延長せずにあっさりと国会を閉じた後、初めての休会中審査として、予算委員会を僅か三時間弱づづではあるが開いた。
数ある委員会の中でも、予算委員会は基本的に国政全般を議論できる場です。
にも拘らず、この日、閣僚席には西村担当大臣ただ一人と他の閣僚席には参考人が三人、また普段は参考人がいる席には副大臣(政府代表?)としているという、これまであまり見たことない光景でした。一瞬、目を疑いました。

小選挙区制度は二大政党政治を進めるための改革でした。それから20年余、それすら確立
できていない日本です。小選挙区制は大政党に圧倒的に有利です。野党がばらばらでいる限り、自民党の独壇場は続きます。せめて、与野党伯仲の状況を造らなくては、独裁国家になりかねません。

議院内閣制の日本も、現状を変えていかないと、代表制民主主義の危機⇒崩壊を招きかねません。政治家をもっと勉強し、有権者も「なんとなく」で決して選ばない土壌を作らなければならないと思います。

2020年6月3日水曜日

「永久平和のために」カント 集英社 を読み直す

この本の帯に⇒この本から「国連」や「憲法第9条」の理念が生まれた。とあります。

赤川次郎氏は、「真実のことばは時代を超えて人の心を打つ、カントは、戦争を「積極的平和」などと言い換えることを決して許さないだろう。とコメントを寄せています。

一文を紹介しますと「行動派を自称する政治家は、過ちを犯して国民を絶望の淵に追いやっても、責任は転嫁する」

世の中を分断することを厭わない政治家、自分の失政を認めない政治家、要注意ですね。

今こそ読みたい16歳からの平和論と、初心者向けですので、私のような者でも、理解出来た気がします。

2020年5月13日水曜日


            井波 律子 「論語入門」岩波新書

『過則勿憚改』 (過ちを改むるに憚るころなかれ)

どなたも知っている、有名な孔子の言葉です。
この言葉の前に、何が書かれているか?

『君子不重則不威。學則不固。主忠信。無友不如己者。過則勿憚改。』

君子(ひとかどの者・権力の座にある者)は、重々しくなければ威厳がない。学問をすれば、頑固でなくなる。真心と誠実さを主とし、自分より劣る者を友人にするな。過ちをおかしたならば、ためらわずに改めよ。
孔子は、45歳も年下の弟子の言葉の対し、自分が誤った返事をしたことに気づき、「前言戯言之耳」と謝ったそうです。

人間は誤りを犯すものです。「責任はある」と言いながら、全然取らない。「こちらから言わせれば、国民の皆さんが誤解している」と言って、反省の弁なし。こんな人たちが国のトップでいる国はどうなんでしょうか?

自粛の最中、論語の入門書を読み直してみています。